Amazon AppstoreとGoogle Playの違いについて
日本国内でも年内にAmazon Appstoreが開始されるという正式な発表がありましたので、Amazon Appstoreにて約1年間アプリ配信をしてみてわかった事を元にアプリ開発者向けに「Amazon AppstoreとGoogle Playの違い」をまとめたいと思います。
間違いがある場合はご指摘下さい。
Amazon Appstoreに付いてのより詳細な内容はAmazon AppstoreのFAQページを参照して下さい。
なお、記載のある内容が原因で問題が起こっても一切保証しませんのでご注意下さい。
– Amazon AppstoreとGoogle Playの違い –
Amazon AppstoreとGoogle Playには大きく分けると以下の違いがあります。
- 対応端末
- アプリ代金の支払い方法
- 販売手数料 (2012/10/10追記)
- 収益の支払い方法
- 年会費の有無
- 審査の有無
- 配信国
- アプリ数 (2012/10/07追記)
- ライセンス管理
- アプリファイル
- 申請時に必要なリソース等
- サポートの質
- その他
各項目について詳細に説明します。
– 対応端末 –
Google Playストアで配信しているアプリは、Googleが許可した端末(及びメーカー純正OS)でしかダウンロードできない様になっています。
Google Playストア無しで販売されている安価な端末ではアプリをダウンロード出来ない為、何とかしてGoogle Playからアプリをダウンロード出来る様にならないかを探している人を多数見かけます。
勿論、アプリをダウンロード出来ないというのは建前で、抜け穴だらけのGoogle Playは「フルマーケット化」と呼ばれる不正行為等により使用できてしまいます。
参照: アプリの不正使用対策エントリ集
Amazon Appstoreの場合は、Amazon AppstoreアプリがプリインストールされているKindle Fireシリーズは勿論の事、それ以外のAndroid端末(恐らくAndroid 1.6以降)にAmazon Appstoreアプリを入れれば使用できる様になります。
※米国ではAmazon Appstoreアプリをプリインストール(但しGoogle Playは無し)して販売されているAndroidスマートフォンが販売されています。(多分現時点では1機種)
上記の事から、対応端末数はAmazon Appstoreの方が上となります。
ただし、現状Amazon Appstoreは以下の点を考慮しないといけないので、単純な比較は危険だとは思います。
- Amazon Appstoreアプリをインストールしてもらわないといけない
- 配信国が米国や欧州の一部しか無い
– アプリ代金の支払い方法 –
Google Playの支払い方法はクレジットカードが基本です。
最近ではキャリア決済、一部の国のみプリペイドカードでの決済が可能になっていますが、それでもクレジットカードのみだけの国や有料アプリにアクセスさえ出来ない国も存在します。
国内では、キャリア決済が出来るキャリアがありますが、最近買収されたキャリアやMVNO(Mobile Virtual Network Operator)のキャリアを使用しているユーザーはキャリア決済が無いのでクレジットカードが基本となっています。
Amazon Appstoreの場合は、クレジットカード、プリペイドカード等での支払いが出来る様です。
– 販売手数料- (2012/10/10追記)
販売手数料はGoogle Play、Amazon Appstore共に売上げ代金の30%です。
つまり、販売者には売上げ代金の70%が支払われます。
– 収益の支払い方法 –
Google Playでは日本の銀行口座に振り込まれます。振込に関する手数料は取られません。
Amazon Appstoreでは、国内販売分は銀行振込み、海外販売分に関しては国際電信送金になる様です。
また、海外販売の場合はEINが必要になるかも知れません。
※詳細はAmazon AppstoreのFAQページを参照して下さい。
この国際電信送金は、受取人(アプリ販売者)が日本の銀行に無用に高い手数料(最低1500-4000円)を払わないといけない可能性が高いと考えられます。手数料を払わなくて済む銀行もあるので、そちらを検討すると良いでしょう。
※この手数料1500-4000円の内容は、海外から日本円で入金されたものを電話連絡と手紙での通知をしてくるだけです。他にも何かあるのかも知れませんが、妥当な金額とは思えません。
– 年会費の有無 –
Google Playは最初に$25支払えばその後は会費はかかりません。
Amazon Appstoreでは年会費$99です。
ただし、現在は免除期間中の様なので、お試しには良いかも知れません。ただし、以下の審査の項目等を読んでからの方が良いかも知れません。
年会費の免除期間だからといって気軽な気持ちで始めたは良いけれど、「次年度は更新しない!」という場合は期間終了後にアプリのサポートが出来なくなります。
特に有料アプリの場合、一度販売した後にその後のサポートの為に年会費を払い続けないといけない可能性もあるかと思います。
AndroidアプリはiOS、Windows Phoneアプリと違い配布の選択肢が多いので、この辺りを考慮して置いた方が良いかと思います。
※ちなみにウチは様子見の為に無料アプリの一部しか配布しない様にしています。そして次年度更新するかは微妙な所です。
– 審査の有無 –
Google Playでのアプリの審査は機械的に調べる程度で人間が審査をするという事は今の所していない様です。
その為、抜け穴が多数有り、悪用されています。
Amazon Appstoreは人間が審査しています。
審査期間は2日-8日程度です。土日も審査している様で頭が下がります。
ただし、結構抜けが多いのでザルな部分も多々あります。
加えて、Amazon Appstoreの審査はたまに審査忘れがある様です。
複数のアプリを同時に申請すると起こりやすいかも知れません。
今まで2ヶ月審査忘れをされていた事があります。 催促をしなかったこちらも悪いのですが(笑)
その為、ある程度の期間を経過したら問い合わせて催促してみると良いかも知れません。
ちなみに、審査順は後入れ先出し方で後に申請したアプリの方が先に審査に通る事の方が多いです。
Amazon Appstoreで何度かリジェクト(Reject)になりましたので、一例を挙げます。
※Amazon Appstoreでは「Reject」ではなく「Pending」と呼んでいます。
- Amazon Appstore以外のアプリストアへのリンクはNG。Google Playへのリンクは論外!(笑)
- 広告があるアプリはスクリーンショットに広告が表示されていないとNG。
- アプリ名に「for Kindle」を付けるとNG。「for Kindle Fire」はOKかも。
- 米国のみで販売されている端末でも審査するので、その端末で動かない場合はNG。(全機種検査は不可能なので流行の一部端末のみだと思います。)
- カテゴリーの審査はかなり好い加減。大項目「Utility」だけを選択しておいたら時計機能は一切無いのに「Utility – Clock」に勝手に分類されていた事がありました。勿論、ダウンロード数は伸びる訳はありませんね(苦) 2013/01/01追記
意図的に広告を表示していないスクリーンショットは論外ですが、広告がメニューの後ろ隠れているスクリーンショットでもNGになる事があります。
ただし、きちんと説明すればOKになる事が何度かありました。前回パスしたスクリーンショットでも今回はNGとかいう場合もありました。
※なお、該当のスクリーンショット以外には広告は表示されていました。
アプリ価格については、Amazon AppstoreはAmazonが勝手に値段を変えたり、 セールをする事がある様です。
Amazon Appstoreでの販売価格がGoogle Playよりも安い、というのもあり得るのかも知れません。
設定した金額より高くなる事は考えにくいですしね。
– 配信国 –
Google Playでは多数の配信国(それでもAppleのApp Storeよりは少ない)があります。正確な数は良くわかりません(笑)
ただし、今でも無料アプリにしかアクセス出来ない国なども存在します。
Amazon Appstoreは以下の通り、まだまだ少ないです。
- アメリカ
- フランス
- ドイツ
- イタリア
- スペイン
- イギリス
- 日本(年内開始予定)
– アプリ数 – (2012/10/07追記)
Google Playでは675,000本のアプリがあると言われています。
対してAmazon Appstoreは4万7639本位と言われています。
数的には圧倒的な違いがありますが、今後もこの数の差は埋まらないと見ています。
なぜならば、 Amazon Appstoreは年会費がかかり、配信国も少ない為です。
ほぼ1年間アメリカだけの配信だったとはいえ、5万本未満しか集まらなかった事実も考慮しないといけないでしょう。
ほぼAmazon Appstore専用機のKindle FireシリーズがGoogle認可のAndroid端末を凌駕する位に売れれば変わって来るのかも知れませんが、それは考えにくいと見ています。
GoogleのNexus 7の様な安価な対抗機が出ていますし、現在アプリ数にはかなりの差があるので、わざわざアプリ数の少ない端末を買う必要は無い、と考える人が大勢では無いかと思います。
しかし、アプリ数が少なければその分アプリを見付けてもらいやすくなる事はあり得ます。
そこをどう考えるかですね。
Google Playでは無料アプリは基本的にライセンス管理が出来ないので、様々な不正な方法で勝手にダウンロードされてしまう傾向があります。
有料アプリはLVL(License Verification Library)を使用しますが、オプション扱いなのでライセンス管理をしていないアプリは「バックアップ&キャンセル」等の手口でアプリファイルを盗まれるケースが増えています。
更にLVL回避ツールが存在する為、Androidの公式開発者ページに記載されている実装方法ではカモにされる状態になっており、きちんと対策をする必要があります。
参照: Androidアプリの改造ツールの詳細と手口について(違法コピー天国の現状報告)
Amazon Appstoreでは有料/無料問わずにAmazon DRMが使用できます。
開発者がアプリファイルを変更する必要は一切無く、アプリファイルをアップロードする時にAmazon DRMを使用する/しないを選択するだけです。
ただし、このAmazon DRMもLVL同様に回避ツールが存在しますので、必ずしも安全とは言えません。
Google Playと違いキャンセルが出来ない事だけが救いという感じでしょうかね。
加えて、Amazonが独自に署名し直します。Amazon DRMを使用する時だけなのかは不明です。
– アプリファイル –
基本的に両ストア共に同じアプリファイルを使用する事は可能です。
しかし、既に上で触れた点などを含めて以下の点は注意が必要です。
- Amazon Appstore以外のアプリストアへのリンクがある。
- Google Playのみで使用可能なライブラリ(LVL、アプリ内課金等)を使用する場合。(逆も同様)
- Amazon Appstoreでは、Amazon独自の証明書を使用して署名をし直される。
- Kindle Fireはホーム画面がカスタマイズされているので、ショートカットなど一部使えない機能が存在する。
- Kindle Fire向けと割り切る場合はハードウェア的に足りない部分を考慮する必要がある。
再署名に付いては、一度アップロードしたアプリファイルをダウンロードして署名し直すオプションが提供される様になりましたので、手間はかかりますが、署名の違いによる問題は解消できるかと思います。
– 申請時に必要なリソース等 –
基本的にGoogle Playと同じリソースを使用する様にしている感じです。
一部独自サイズのプロモーション画像が使えたり、114×114アイコンが必要など別途用意しないといけないリソースがあります。
※114×114アイコンはAppleのAppStoreを意識した感じですね。
アップデートの説明文等はGoogle Playよりも長文が使えたりしますが、短いアプリ説明文が必要だったりと少し手間がかかります。
– サポートの質 –
Google Playでは、まず問い合わせ窓口が見つかり難くなって居るのが基本で、やっとの思いで問い合わせても3回位やり取りをすると途端に無視が始まります。
つまり、毎回解決しません。サポート窓口がある様に見えて、実際には無いも同然な状態です。
Amazon Appstoreは、年会費を取るだけあって、すぐに返答が来て色々対応してくれます。
ただ、アプリのセルフリジェクトも問い合わせる必要があるので、そこは直して欲しいですね。
– その他 –
収益性に関しては、Amazon Appstoreの方が良いという話もありますが、有料アプリの販売はしていないのでわかりません。
参照: なぜGoogle Playは収益性が悪いのか?
今まで見てきた限りでは、Amazon Appstoreは、Kindle Fire専用で、他の端末でAmazon Appstoreを入れているユーザーは「今日の無料アプリ」という有料アプリが期間限定で無料になる客寄せキャンペーンの為だけに入れている様に見えます。
勿論、 「今日の無料アプリ」で有料アプリを無料で配布しても開発者には1円も入ってきません。
ちなみに、Amazon Appstoreの公式Twitterアカウントではこの 「今日の無料アプリ」の告知ばかりです。これが何を意味しているのかわかるとかなり役に立つでしょう。
ストアの出来という意味では比べる迄も無くAmazon Appstoreの方が通常のAmazonのシステムを使用している分遙かに上ですが、アップデートされる可能性のあるアプリの販売の時代に古いバージョンのレビューコメントがトップページに残り続けるという実情にそぐわないシステムになっている事は感じています。
古いバージョンのレビューコメントがトップページに残り続けるのは両ストア共通の問題ではありますね。
ただし、 Amazon Appstoreの場合はレビューコメントを書いた人の他のレビューコメントも参照できる為、元々文句が多いユーザーなのかどうかは把握できます。ただし、他のユーザーがそこまで気にするとは思えませんがね。
Amazon Appstoreもアプリに対してAmazonのアフィリエイトリンクが使える様になる可能性はあります。
Google Playにはアフィリエイトが無いので、もしできれば大きな利点にはなると思います。
その分アプリ紹介ページだらけになる可能性はありますが、市場の活性化という意味では良い事なのかも知れません。
上記の様に、色々問題のあるAndroidアプリ界の中に更なる別ストアが出て来ても素直に喜べないのが実情なのかも知れません。
最近ではGoogleがNexus 7等の安いAndroid端末を販売しているので、安いけれどGoogle Playは使えないAndroid端末は淘汰されていく可能性があります。
その上で年会費を払ってまで理不尽なコメントを書かれる場所を増やして行くかどうかは考慮すべき事だと思います。
Androidアプリ数がGoogle Playを越えるストアは出て来ないと考えています。Google Playの問題は収益性の悪さではあるのですけれどね。
ウチの場合、Amazon Appstoreで配信を始めて1年近く経つので次から年会費がかかる可能性があるのですが、更新するかは微妙な所です。
再度免除であればそのまま継続しますが、アプリの二重管理状態になりやすいので、アプリファイルを共通化するなど、考慮しないと手間ばかりかかる様になるかと思います。